小話

隣人を愛せよ

会社や上司に対する不平不満をよく見聞きする。
そんな時、「やはり僕は上司、同僚にとても恵まれている」と実感する。
昨日もこんなことがあった。

突然上司に呼ばれ
「ごめん。来季の件だけど××(僕の後輩である)を昇格させることになった。申し訳ない」
と言われた。
僕は子供を保育園に送っていくため他部員より出勤時間が遅い。
また、夜も他部員に比べて断然早く帰る。
出張もできないと言っている。(いろいろ事情がある)
そんな勤務状況から考えて昇格なんて、
そんなこと全く考えていなかった。

「いやいや、昇格なんて滅相もありません。
 勤務状況から考えても僕より××のほうが
 全然仕事してますから、逆に僕が昇格したら××や他のみんなに申し訳ないです」

本音で思っていたので、そう答えた。

「悪いな。理由はお前の言うとおりだよ。
 俺としては直属だし仕事内容から考えると
 お前をあげてやりたいんだが.....どうしてもまだまだ古い体質があってな。
 長時間仕事している奴=頑張ってるっていう。
 とはいえ××も頑張ってくれてるのは間違いないから難しいとこなんだが。う~~ん」

「わかってますよ。すいません。気を遣わせてしまって」

「いやいや。なんというかスマンな」

たいして会社に貢献できていない部下に対して
ココまで気を遣ってくれていることにありがたいという気持ちと、
申し訳ないという気持ちでいっぱいになった。
それとともにとても温かい気持ちになった。
普通考えられないことだ。
昇格てのは、上司が独断で決定していいわけで
昇格できなかった理由を部下に教えてくれたり、
ましてや詫びるなんてこと普通はない。
今後の部署内の雰囲気を配慮した行動であり、
彼の懐の深さには本当に頭が下がる思いだった。

上司がココまでしてくれたんだから
僕もフォローをしておこうという気持ちになって××に声をかけた。

「こんなことオレが言うのも失礼な話なんだけど部長から聞いたよ。
 昇進おめでとうございます。
 まぁ、細かいことは今後とも気にしないでね。
 オレが言うのもおこがましいけどさ」

後輩からしたら、隣に座っている先輩を追い越したわけだから、
気にしてるだろうと思い声をかけた。

「いえいえ。ありがとうございます。
 なんか、すいません。気を遣ってもらって」

と××は言った。

僕の周りには優しい人がたくさんいる。僕は人に恵まれている。
それだけで今の会社で働いている価値がある。
始めに書いた通り、会社や上司に対する不平不満をよく見聞きする。
この僕の状況はとても特別な状況なのだと感謝しなくてはならない。

私見だが会社は環境だと思う。
やりたい仕事があってそのためなら何があっても大丈夫であれば別だが、
会社、仕事は環境だと思う。人だと思う。
仕事内容、給料なんてのは後からついてくるものだと思う。
ただし環境ってのは入ってみないと分からない。そこは運。
だから自分を騙してでも一度会社を愛することが必要だと思う。
それでもダメならリタイヤすればイイ。
まず自分から歩み寄る努力が必要。不平不満はそのあとだ。

まずは自分の周りの人を好きになること。厄介な部分も含めて好きになること。
そうすると少しずつ見える景色も変わるし実際に状況も変化するかもしれない。

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