本とか音楽とか

一寸引き

今日は、まず以下の一文をご紹介します。
本からの引用になります。

こういうことが最初の頃あったよ。
家に上る林道に大きな岩が顔を出しててジープがいつものりあげるんだ。
動かしたいけどどうにもならない。
畳一畳分位のでかい岩だったからね。
ある日、近所の平山君っていう農家の青年が遊びに来てて
彼に何気なく訊いてみたんだ。
オレにはどうにもならないんですけど、あんただったら
この岩どうします?って。
動かさにゃならんなら何とか動かすよって、平山君が
ボソッと言ったんで、どうやって!って思わず訊いたよ。
重機も何も無いんだぜって。
そしたら奴は一寸考えて、まずスコップで岩のまわりを
四方から丹念に掘り起こすってそう言ったんだ。
それから丸太を二本持ってきて一方を梃子(てこ)にして
ぐづぐづ上げるって言うんだ。
そしたら「一日に3センチ位動くんでないかい。
十日もやったら1メートルくらい動くべさ」
――――――!
これにはショックを通り越して感動したね。
思わず土下座して「先生っ!』
って叫んだよ。
一日3センチ、十日に1メートル!
これは俺たち都会人の思考ではもう
「動かない、無理だ」
って範疇のもんだぜ。
だけど、たしかに一日3センチも「動いた!」って
ことにちがいないんだよなぁ。
君たち分かるか?この衝撃が!
「一寸引き」って言葉があるんだって、その頃原住民の
ヨシオさんから教わった。
「一寸引き」ってのはね、こういうことなんだ。
とても手に負えない重いもの
たとえば太い木の根っ子とか大きい岩なんかを動かすには
一度にバッと動かそうとせずに時間をかけて
一寸ずつ動かせ。そうすりゃいつかは動く。
これはもう哲学だっておもったね。
文明はいまや即席の時代に入ってる。
すぐに結果をだすことを求めて、そのために
金やエネルギーを使う。
早く結果のでることが善で、時間のかかることは
避けなければならない。
果たしてそのことが正しいのかって、
生まれて初めて俺は考えたね。
たぶん、この頃からだと思うんだ。
人の生き方の「座標軸」ってものを
どっかで意識し始めたのは。

これは脚本家・倉本 聰さんの著書『獨白 (どくはく)』からの引用です。
倉本さんが北海道に移り住んだ頃、家の前に大きくて邪魔な岩があって、
いつもこの岩に車がのりあげてしまって困っていたらしいのです。
それで、どうにかしてこの岩をどかす事ができないか?っと、
近所に住む方に尋ねた時の出来事を綴っています。

『一寸引き』

馴染みのない言葉です。
私は初めて聞きました。北海道特有の言葉なのでしょうか?

とても手に負えない重いもの
たとえば太い木の根っ子とか大きい岩なんかを動かすには
一度にバッと動かそうとせずに時間をかけて一寸ずつ動かせ。
そうすりゃいつかは動く。

まさしく北海道という広大な土地を開拓した
フロンティアスピリッツを感じる言葉だなぁっと。

倉本さんは衝撃を受けた。ビビッと。
僕も同様に衝撃を受けました。

前述の通り、

文明はいまや即席の時代に入ってる。
すぐに結果をだすことを求めて、そのために
金やエネルギーを使う。
早く結果のでることが善で、時間のかかることは
避けなければならない。
果たしてそのことが正しいのかって、
生まれて初めて俺は考えたね。

っという風に倉本さんが感じたわけだけど、
僕も僕なりに感じたことがありました。

まさに倉本さんの言うとおり、
効率、効率の世の中で、僕もご多分にもれず
効率性をプライオリティとして生きています。
いや、生きるようになったというのかな。自然と。
世の流れに身を任せていれば自然と
そうなっていくわけでして。

『効率的に考える』ってのは、確かに社会生活を
送っていく上でものすごく重要なことなんだけど、
なんでもかんでも効率的なモノを選択して進めて
いくということは同時に、
『非効率なものは全て捨てている』ということになるわけです。

モノは言い様でして、
『非効率なものを全て捨てている』っていうのは、
イコール、
『諦めてる』
ってことにならないか?と。

自分の子供には『諦めるな!』とか、
知ったような顔で言いつつ、自分は
『非効率だから』って都合のイイ理由をつけて
『諦めてる』んじゃないか?と。

面倒なモノ、コツコツやらないとものにならないモノ、
自分に不都合なモノたちの中にも
実は、完成すれば素晴らしいモノがあるんではないか?と。
いや、あると思うわけです。

それなのに僕は逃げて生きている。
それは違うんじゃないか?と。

っていうか、それに今気づくことができた。
これは幸運なことなわけだから、
少しだけでもメンドクサイからって逃げていた、
避けていたことをやってみようかなぁ。

別に農業をやるとか、夢だった職業をもう一度目指すとか
そういうことじゃないですよ。そんな途方もないことではなくて。
(まぁ、それもすでに諦めてるってツッコミが入りそうですが)
一度は興味をもったり、手に取ったものの、
鼻毛を抜いてポイっと捨てるようにノールックで諦めてた
もっと身近にあったであろうモノを、
もう一度、手の中に戻して検討してみようかなと思ったわけです。
現実的に。

この『気付けたこと』ってのがポイントです。幸せな話。

逃げるな!ツラくても、成果が出なくても諦めずに
コツコツ一寸ずつ動かしていこう!

皆さんはどうですか。
一度、自分の背中を振り返ってみてはいかがでしょうか。



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