ラプソディー・イン・リトルバード【Rhapsody in little bird】

パソコンに向かって仕事をしていると隣の席の鈴木課長が、

「あっ!」
っと一言もらした後、背もたれにもたれかかり、
わざとらしく目頭を押さえた。

「どうしたんですか?」

「参ったな。結婚だってよ…..」

「えっ!?誰がですか?」

「誰がって、お前の知らない人だよ」

「会社の人とかじゃないんですか?」

「違う違う」

「なんだ。そうか。僕の知らない人か」

「ってか、オレも実生活では知らない人なんだけどね」

「えっ?どういうことですか?」

「アレだよ。アレ。ツイッター」

「あ~~、ツイッター。
 んでも、なんで?
 ツイッターのフォロワーさんが結婚したからって、
 そんな感慨深いものですかね?
 結構頻繁にやりとりしてたとかですかね?」

「いやっ、全然。やりとりなんて数える程度しかしてない」

「え~~っ、じゃ、なんでそんな驚く必要があるんですか?」

「今回の場合は、深さじゃない。長さなんだ。長さ」

「ふ~~ん。どういうことでしょうか?」

「この今回結婚するっていう女性は、オレがツイッターを
 始めてすぐの頃にブログ経由でフォローしてくれた人なんだけどね。
 もう3~4年近くになるかなぁ~。フォローしてから。
 3~4年前は、まだ大学生でね。
 毎日、今日は飲み会だの、明日はコンパだのつぶやいててね。
 そのうち彼氏ができて、彼氏とどこそこに行っただの、ケンカしただの、
 別れただのってのがあってさ。
 そのうち、大手アパレルメーカーに就職が決まってね。
 就職が決まるまでだって大変だったんだよ。10社も20社も受けて、
 全然決まらなくて。
 オレもガンバレ!ガンバレ!っていつも思ってたんだよ。
 心の中でね。直接メンション飛ばすほどの間柄じゃないから、
 ガンバレって思っても突然メンション飛ばすわけにもいかないじゃない。
 だから、TL見ながらガンバレ!ガンバレ!ってね。
 だから就職決まった時は嬉しかったな~。自分の娘のことみたいにさ。
 それで、就職決まってから先輩に怒られただの、ツライだのって。
 慣れるまでの辛抱だからガンバレ!もう一ふんばり!って思ってたんだよ。
 心の中でね。
 んで、そのうち、今回結婚することになった相手と出会ってね。
 相手の男性ともいろいろとあったみたいだけど、
 ついにゴールインできたんだなぁってね。
 そう思ったら、なんかなぁ~。ちょっと、感動しちゃうよね。
 なんとなく」

「なるほどな~。確かに。
 ツイッターってその人の生活そのものですもんね。
 しかもフェイスブックにように知り合いじゃないから、
 赤の他人の生活を毎日見てるようなもんですもんね。」

「そうなんだよ。ツイッターの面白いところはそこなんだよ。
 赤の他人の相互生活ウォッチングをするSNSってトコなんだよね。
 フェイスブックとかは実際の知り合いなわけだからどうしても発言に
 色を付けてしまいがちだけど、ツイッターは全然おかまいなしだからさ。
 もちろん、それによって弊害が出やすいわけだけどね。誹謗中傷罵詈雑言の。
 けど、まともに使ってるとこれほど長く使えば、長く使うほど味の出てくる
 SNSが無いよね。今を楽しむだけじゃなくて、歴史を共有し楽しむことができる。
 赤の他人のね。これは素敵なことだと思うよ」

「そうですね~。それは言えるかも」

「みんながツイッター離れしている中で僕はその歴史を楽しむようにしてるんだよ。他にもいろいろな人がいるよ。最初は高校生だったけど一生懸命勉強して大学に合格した子や、ニートだったけど、なんとか就職して今も頑張っている人。離婚してしまった人や、それまで毎日バンバンつぶやいてたのにある日突然パタッとつぶやかなくなって、それっきりの人とかね。いろんな人がいる。
逆に僕のつぶやきも返信はなくともずっと見てくれてる人も必ずといると思う。これは時間が経過すれば経過するほどスルメのように味が出てきて、そのつぶやきを日々追っかけていること自体が素敵なことになっていくんだと思うんだよね」

「まるで家族のことのようですね」

「そうだね。ある意味、家族のことより、
 よく知ってるかもしれない。顔は知らないけどね」

 継続は力なり。



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