毎週日曜日の午後、フジテレビで『ザ・ノンフィクション』という番組が放映されていて、
欠かさずというわけではないが、気がついた時に録画して観ている。
先日、録画しておいた『老人と放射能』というプログラムを観たのだが、
コレが非常に見応えがあってよかった。
いやっ、よかったって表現は失礼だろうな。
とにかく、メチャクチャなのだ。
これでもかってくらい悲劇が舞い込む。
この話の主人公は、
福島県浪江町で年老いた犬とともに
自給自足生活を送る川本年邦さんというおじいさんだ。
『人に尽くすことが生きる価値』というのが川本さんの信条。
戦争直後から幻燈機という今でいうプロジェクターのようなものを使って
子供達のために紙芝居を見せていた。
また、自宅を無料開放し自分の給料を子供達のために注ぐ。
その後、結婚するものの相も変わらず子供達のために自宅を
開放し続ける。
結婚20年目にして
『神様のような人についていくのに疲れました』
と書き残し妻が出て行ってしまう。
その後、長男夫婦と同居するもうまくいかず、
68歳で浪江町へ移住。
移住してきてからも、地元の小学校に本を寄贈するなど
スタンスを変えず活動を続ける。
ココまで見ても結構、波乱万丈な人生だが、
ここからさらに人生がオ-バードライブする。
ある日訪ねてきた子供達のための活動をしているという
NPOの女性に老後の蓄えの¥2,430万を騙しとられる。
その後、現金収入は年金の一ヶ月¥45,000のみとなり、
一時的に気落ちしたものの、川本さん、なんと強靭な精神力よ。
気持ちを持ち直し、その後も小学校で幻燈を見せたりと積極的に活動を再開する。
野菜などを作り細々と自給自足の生活を続ける。
川本さんはひょうひょうと言う。
『好き勝手やらせてもらって、幸せな人生ですよ』
ココまで見ていて、その姿が『北の国から』の黒板五郎とダブってみえた。
ボヤ~~っと。
当初、この番組は川本さんの波乱万丈ながらも自分の意思を貫き、
何事にも動じない姿勢を持ち強くたくましく生きる姿を通して
『老人の孤独』と『幸せ』って何か?
ってのを今後高齢化社会に向かっていく、いや、向かっている日本社会に
問いかけるドキュメンタリーにする予定だったのではないかと思う。
ココまで見ても十分パンチ力のあるドキュメンタリーだし、
問題提起する力も十分持っていると思う。
しかし。
しかし、このプログラムは方向転換を余儀なくされることとなる。
それは、昨年、日本を襲った東日本大震災によってもたらされた。
この川本さんの住む浪江町が原発事故の影響を受け、
避難区域に指定されたのである。
ココからカメラは避難する川本さんを追うことになる。
自宅に愛犬を残し避難所に避難する川本さん。
そのカメラには川本さんだけではなく止む無く避難を余儀なくされた
福島の皆さんのリアルな姿が映し出される。
震災発生前まで、ひときわ異彩を放っていた川本さんの人生が
一気に霞み、そこに映っている全ての方々の人生と同列というか
川本さんだけが特別では無いように見えたのは私だけではないだろう。
この度の出来事は、それだけのパワーがあった。
そういうことだろう。
その後、川本さんは一時帰宅で自宅から幻燈機を持ち出し
避難所同室の方々に幻燈を見せてあげたり、
いつ戻れるか分からない自宅の畑を耕したり、
愛犬と共に仮設住宅に入居できたりと、
カメラはその後の人生を駆け足で記録していく。
なお、川本さんは現在も仮設住宅で暮らしてらっしゃるようです。
着地点が当初の予定とは違えども、
これこそ現実なのだなと感じることができる
鳥肌が立つ作品だった。
相変わらず、見終えた後の脱力感はハンパじゃなかったが。
唯一の救いがあるとすれば、
最後の最後まで川本さんのスタンスも
その飄々とした感じも崩れず、凛としていたことだろうか。
それにしても、その逞しさ、粘り強さ、意志の強さを
僕を含め今の若いモンに真似できるだろうか?
っと考えさせられた。