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全買いの善悪

(部長)『くそぉ~。売ってなかった~』

昼休みから戻った部長がボヤく。

(僕)『アレッ。珍しく声を荒げてどうしたんですか?』

(部長)『今、本屋に行ってきたんだけどね。
     欲しかった本が無かったんだよ。
     シリーズで7作あるんだけどね。
     そんな大ブームで売れまくってる本でもないから
     昨日見かけたとき、明日にしようと思ってさ。
     今日、行ってみたら全部無くなってたんだよね』

(上原)『あぁ。それ”全買い”されましたね。
     ありますよね~。そういうの』

(部長)『ホント信じられないよ。
     僕は1冊ずつ買っていくタイプなんだけどね。
     1冊読み終わりそうだな~っと思ったら
     次の1冊を買うんだけど。全く.......。
     そんなまとめて読むつもりなのかね?しかし......』

(澤山)『あぁ、その論議ありますね。
     全買いは悪か否か?っていう。
     マンガ喫茶っていうの?いまどきはネットカフェ?って
     いうのかな。
     まぁ、そういうトコで自分の読みたいマンガを全巻まとめて
     持っていっちゃう人いますね~』

(上原)『いるいる!超迷惑だよ。アレ。
     んで、結局読みきれないで戻しちゃったりしてんだよ!アレ!』

(澤山)『そうそう。絶対そうだよね。
     そんな一気読みにも限度があるもんな』

(上原)『やっぱり。アレですよね。2冊以上ある場合は全買いもイイけど、
     各1冊しかない場合は、必要な分だけ買うのが
     マナーってもんですよね』

(澤山)『言えるな~。それは。初めて読むなら1巻だけ。
     途中まで行ってるなら、次巻だけ。部長の買い方と同じ』

(部長)『あ~あ。楽しみにしてたのにな。今日の帰り電車で読むの』

(僕)『そうですよね。でっ、でも。
    たぶんのその人全買いじゃないと思うなぁ......』

(上原)『なんでですか?』

(僕)『なんとなくそう思うだけだよ........』

(上原)『ふ~~ん』

(澤山)『んで、部長。部長はなんて本が欲しかったんですか?』

(部長)『あぁ。それはね。高田郁って作家の........』

その瞬間、僕はトイレのために席を立った。

ちなみに僕の通勤バッグの中には、昼休みに買った
みをつくし料理帖シリーズの3巻「想い雲」から7巻「夏天の虹」が
ギッシリと入っているのだった。

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