持つべきものは金持ちの知り合いである。
次男が誕生し、このたび改めて実感した次第だ。
次男の誕生あたり、
我が家で用意したものはレンタルベッド、
台所シンクでの沐浴用ベビーバス、
オムツ、数枚の下着類とロンパースなどなど、
最低限生活に必要なもの。
以上。
その他諸々は、ぜ~~んぶ貰い物である。
洋服はもちろん歩行器、搾乳機、哺乳瓶、
ベビー布団、メリーに至っては我が家に3台もある始末。
ちなみにバギーも3台。布団は2組。
ウチはゴミ捨て場か.......。
いやいや、そんな事言ってはいけない。
ホントにありがたい話で、高額なものは全て
長男の友人家族(何人もの)から頂くことができた。
これらを買ったら、いくらになることか。
ありがたや。ありがたや。
というわけで、子育てに関わる初期投資の
ほとんどを抑えることができたわけだが、
やはり若干の不具合もある。
全て10年ほど前の年代モノ。
ドコに不具合が出るか?
一番先にドコにほころびができるか?
そう。
クレバーな方はお分かりの通り、
ほとんどのものが電気系統に故障をかかえている。
入れっぱなしの電池が液モレしてしまっていて、
その部分からサビていたり、
もう配線自体が切れていたりと様々だ。
貰い物なんだから贅沢言うなと言われればそれまでだが、
ボタンをポチッと押すと動物の鳴き声がするはずのものや、
イッツアスモールワールド(it's a small world)が流れるはずのものが、
全く無反応で、それでもなお何かを期待して押し続けている
我が子の姿を見ることほど忍びないものはない。
お父さんにお金が無いから悪いんだよ。ごめんね......。
そんなネガティブな気分にさせられる。
だからと言って修理に出せば、本体より高い金額の
修理代を請求される危険性があるし、かといって自分で
直せるような能力も無し。
そんなこんなで方々(ほうぼう)を当たって一つの解決策を
発見したのである。
その名も
『おもちゃの病院』
世の中にはなんと便利なサービスがあるのだろうか。
目黒区は区民センターで毎週日曜日13:00~15:00まで
『おもちゃの病院』と称してボランティアのオジサン方による
おもちゃ修理コーナーを設けてくれている。
う~~ん。夢のあるサービスだ。
早速、壊れて音の出ないメリーのヘッド部分と
歩行器の中央に付いていて押すと動物の声の出る
オモチャをお願いしてみることにした。
区民センターに着き受付を済ませる。
病状や住所、氏名を記入。
病状って.....。
とりあえず『失語症』と書いてみたが、
よく考えたら『失語症』ってのは医者が判断することであって
診察後の病名なので『ここ数年、声が出ません』と
書き直す。
メンドクサイ男だとの声が聞こえてきそうだが、
それは置いておいて。
受付を済ませ、ズイズイと奥へ進むと4~5名のオジサン方が
ハンダゴテ片手に既に修理の真っ最中だ。
『あ~、こんにちは。こちらへどうぞ~』
っと、ロマンスグレーの品の良いオジサンが
声をかけてくれた。今日のドクターはこの人のようだ。
『さぁ、見せて下さいね。どれぇ~?』
まず、メリーのヘッド部分のスイッチ関係をくまなくチェックし、
音が出ないことを確認すると、ドライバーを取り出して
クリクリパカッっと分解。
『う~~ん。コレはココだね。
ココの配線がショートしてるだけだと思うよ』
っと、ハンダゴテで患部と思われる部分を溶かし
新たにハンダ付けする。
『コレでどうだろうか?』
オジサンがスイッチをONにした瞬間、
陽気な音楽が流れ始めたではないか!
『お~っ!すごい!!ありがとうございます!』
『まぁ、このくらいはお茶の子さいさいだよ』
お茶の子さいさい........?
まぁ、そこは目をつぶるとして.......なんということか!
いとも容易く、一つ目のオモチャを直してしまったではないか。
『ゴッドハンド』
この時、僕の脳裏に浮かんだ事はこの一言に尽きる。
『んじゃ、次はこれかな』
次に動物の音が出なくなったオモチャを
先程同様くまなく見る。
これもまた先程同様、慣れた手つきで
クリクリッとカバーを取り外し、中身を確認。
そして、ナニやらよく分からない器具を
取り出して電圧?があるか、反応するかどうか
確認しているようだ。
『う~~ん。コレは結構厄介だなぁ』
よく分からないが、厄介のようである。
オジサンは他のドクターの所に行き、
あ~でもないこ~でもないとミーティングを行い、
数分後、戻ってきた。
『あのねぇ。これちょっとね~。もうこの基盤の部分が
ダメになってるみたいなのね。
それで、このままだとどっちみち音が出ない状態だと
思うのね。
それでね。いろいろ考えてみたんだけどね』
『動物の声じゃなくてもいいですかね?』
んっ!?動物の声じゃなくてもイイとはどういう意味だろうか?
一瞬、声を失っていると、
『あぁ、つまりね。
動物のボタンがあるでしょ?これ。
だけど、例えば牛のボタンを押すと『モ~~』って鳴き声じゃなくて
う~~ん。そうだな。例えば........』
『牛ボタンを押すと
「水戸黄門のテーマ」が流れてるとか。ねっ』
................牛ボタンを押すと、水戸黄門のテーマが?......。
ただで直してもらっているので文句は言えないが、そんな不条理な...。
オジサンは続ける。
『あのね。動物の声とかはね。難しいんですよ。
この機械の音を出そうとおもったらね、この部分に手を加えなくちゃ
ならないんだけどね。動物の声とかはちょっと難しいのね。
でも、2音構成の音楽だったら簡単なのよね。
オルゴールみたいな。』
あ~、なるほど。そういうことか。
オジサンは、その中枢部分を直してくれようとしているのか。
やっと理解できた。
「直らない」と簡単に言えるところを、
わざわざ話し合ってくれてなんとか音が出るようにしてくれよう
としているのに、なんと失礼な事を。
逆に、なんとありがたいことか。
『ありがとうございます。
理解できました。結構です。
音が鳴るようになるなら動物の鳴き声じゃなくても
大丈夫です。
ただ、子供の使うものなので、できたら水戸黄門とかじゃなくて
もう少し、こう。なんというか、子供向けの音源がありがたいんですが....』
『あ~、ごめんごめん。水戸黄門は例えですよ。例え。
もちろん、もっと子供らしいものにしますから私に任せてもらっても
いいですかね?童歌みたいなものでもいいですよね?』
『あぁ~、ありがとうございます。全然イイです。
お任せしますので。』
っということで、入院することになった。
ただでこんな親身になって直して頂けるなんて、
とてもありがたいし、モノを大事にするって意味でも
とてもイイ気分である。
感謝してもしきれない気持ちでいっぱい。
あのオジサン達はホントに『ゴッドハンド』だな。
っと、しみじみ思った。
数日後、連絡があり修理が完了したとのこと。
修理されたオモチャを受けとり、家で早速ボタンと押してみたところ
牛ボタンを押すと、『ドナドナ』が、
馬ボタンを押すと、『走れコウタロー』が流れたのであった......。
ナイスセレクトだ。